大豆加工の「技術」から商品を生み出し続ける~ 太子食品工業株式会社

更新日: 2025年4月14日
 

太子食品工業株式会社は、豆腐、納豆、油揚げ等の大豆製品を主力商品とした和日配食品を製造・販売する、青森県に本社をおく企業です。今回の取材では、宮城県白石市にある白石蔵王工場へと訪問し、常務取締役の工藤氏、広報販促室の田中氏、白石蔵王工場工場長の佐藤氏、技術開発部の水野氏、東海林とうかいりん氏に同社のヒット商品である「なめらか豆腐バー」と豆腐バーの新ブランド「モットーフ」を中心にお話をお伺いしました。

※下記より、同社古川清水工場の方々のインタビュー記事もご覧いただけます。

会社全体を巻き込んで作り上げたヒット商品「なめらか豆腐バー」

「私たちは“水”がキレイで豊富なところで仕事をしているんです。宮城でも青森でも、近くに自然公園がある場所に立地しているんですよ。」(佐藤氏)

白石蔵王工場の工場長である佐藤氏より、太子食品工業の特徴や歴史について説明を受けた後、さっそく同社のヒット商品である「なめらか豆腐バー」のお話をお伺いしました。

「豆腐バーは技術、商品開発、営業など会社全体、みんなを巻き込んで作り上げた商品です。」(東海林氏)

「豆腐って体が弱っているときにも食べることが多いですよね?だから原料にもこだわっています。(会社の利益だけを考えると)この原料を入れたい…。でも、それをやらずに良いものだけを使うことを続けています。」(田中氏)

「豆腐バーは、皆さんに豆腐の新たな可能性を感じてもらえる商品だと思います。これからも“ファン”を増やしていきたいですね。」(工藤氏)

豆腐バーは、豆腐を片手で持てるスティック状に加工した商品です。同社の豆腐バーはミヤギシロメ※1などの国産大豆を使用し、独自製法でなめらかな食感に仕上げた点が特徴で、大手コンビニチェーンで販売されているガトーショコラ味がSNS上にて話題となり、若年層を中心に人気を博しています。2025年2月には、海外展開も視野に入れた新ブランド「モットーフ」として味やデザインを刷新しました。主担当の一人である東海林氏が「みんなで作った」と話すとおり、社員の方たちひとりひとりがそれぞれの視点で、豆腐バーへのこだわりを紹介してくれました。

「技術!!うちの会社の強みは技術です。豆腐バーも(技術開発部の)水野さんたちが作ったきぬ練り※2の技術があったからこそ生まれました。」(東海林氏)

「最初は自社のオートクレーブ※3で商品案の試作を行っていたのですが、“きぬ練り”の可能性をいろいろ試してみたくて、宮城県産業技術総合センター(以下「センター」)のレトルト装置を借りて試作したこともあります。」(水野氏)

「社名が食品工業・・となっているので、やっぱり私たちは“技術”です。うちの豆腐バーはなめらかなのに“立つ”んです。食感をなめらかにすると豆腐は柔らかくなる。それなのに“立つ”豆腐を作れるのが私たちの技術です。」(田中氏)

「豆腐バーを作る生産ラインも特殊で、自分たちでラインの工程を決めて、(生産ラインを)作ってもらいました。私たちからの難しい要望もあったので、生産ラインメーカーの方には苦労をかけたかもしれませんが…(苦笑)。でも、この作り方だから、なめらかな食感の豆腐バーが作れるんです!」(工藤氏)

会社の強みは?という質問にはっきりと「技術」と応える社員の皆さん。各々の視点で豆腐バーの“良さ”をお話ししてくれました。

「賞味期間が長いことも特徴です。物流日数をかけられるので、遠方の地域にもお届けすることができるようになりました。今後は海外展開も視野に入れています。」(工藤氏)

豆腐バーのヒットに満足せず、その技術力を活かして、今後、まったく新しい領域や海外市場などにも意欲的に挑戦する姿勢が伺えました。

※1 ミヤギシロメ:大豆生産量全国第二位の宮城県で誕生した大豆の品種。大粒で甘く、ヘソの部分が白いことが特徴。
※2 きぬ練り:同社特許技術「きぬ練り製法」で製造した、大豆を原料としたクリーム状のなめらかなペースト。豆腐バーの生地となる。
※3 オートクレーブ:高温・高圧の蒸気で加熱する装置。

「モットーフ」の新パッケージ。4つの味が楽しめる。

“ペルソナ”を活用した商品開発

「豆腐バーの開発にはペルソナ(具体的なユーザーターゲット像)※4を使って商品開発に取り組みました。以前、センターのデザイン研修に参加して学んだものです。ペルソナがあることでブレない商品開発を行うことができました。開発に関わるメンバーの意識を合わせられることもいいですね。ペルソナの活用方法を教えてくれた講師の高橋さんは、私たちの会社が創業した青森県の出身ということもあり、運命を感じました(笑)。研修受講後も、デザインやCMの仕事でご一緒しています。」(東海林氏)

「ペルソナに合わせてパッケージの形状も考えられているんです。」(田中氏)

「パッケージの角を丸くカットしています。手に取ったときの(角が手に刺さる)不快感を減らすためです。あとは、皆さんも、“食品パッケージの角がビニール袋を突き破った”なんてことを経験したことありませんか?それも防いでくれます。自分自身が経験したことや、ペルソナに起こり得る“ちょっとした嫌なこと”が起こらないように注意を払いました。」(東海林氏)

「豆腐バーのサイズにもこだわりがあって…(東海林氏を見る)。」(田中氏)

「ペルソナ像である女性に合わせて、バーの幅や長さなどを調整しています。女性の口の大きさの平均値をもとに、女性が食べやすいサイズを研究しました。」(東海林氏)

「パッケージの文言にも私たちからのメッセージを込めています。(学術用語の)タンパク質ではなく、(健康、福祉、介護等に関連することに用いられることが多い)たんぱく質と表記しています。豆腐バーでしっかりと栄養を取ってもらい、健康的な生活を送ってほしいという願いです。」(田中氏)

センターの研修事業を活用して商品開発の技術をさらに磨いた同社では、”ペルソナ”を活用することで、ユーザーへの訴求効果がより高い商品の開発に成功しました。また、ペルソナを活用することで、開発に携わる多数の方々の“意識合わせ”も行うことが出来たようです。

※4 ペルソナ:架空の具体的なユーザーターゲット像のこと。ペルソナの詳細(名前、年齢、性別、生活スタイル、趣味嗜好など)を決めて、その人物のニーズにあった商品開発を進めていく。

太子食品の商品開発部の方々に参加いただいたデザイン研修の様子
ペルソナをもとに発案したアイデアを発表する様子。

今後のビジョンについて

「これからも“技術から商品へ”という姿勢で取り組んでいきます。ブルーオーシャン(新領域の市場)で戦えるものを作っていきたいですね。」(工藤氏)

「太子食品ならではのプラントベースフード※5を作っていきたいです。私は“技術”の担当なので、新しい商品のもと・・となるものを作っていきたいですね。これからもセンターを活用しようと思います。」(水野氏)

「XやInstagramといったSNSを使った情報発信を進めていきたいです。生成AIを活用して業務の効率化にも取り組んでいきたいです。」(東海林氏)

「宮城県産大豆も使用している太子の新しいブランド“東北そだち”のことも皆さんに知ってもらいたいですね。CMの映像は(センターデザイン研修講師の)高橋さんと一緒に撮影したんですよ。」(田中氏)

今回のインタビューは技術、営業、商品開発、製造のそれぞれの視点から、“豆腐バー”についてお話を頂きました。皆さんの言葉から、自社の技術力と自社製品の美味しさへの自信が伺える取材となりました。

※5 プラントベースフード:植物由来の原料で作った食品のこと。

注:秘密保持のため一部画像を加工しています。

取材日:2025年3月12日

会社概要

所在地[本社]〒039-0141 青森県三戸郡三戸町大字川守田字沖中68
[白石蔵王工場]〒989-0232 宮城県白石市福岡長袋字坪家沢裏19-1
連絡先TEL : 0179-22-2111(本社)
ウェブサイトhttps://www.taishi-food.co.jp/
事業内容和日配食品の製造・販売/各種商品の仕入れ・販売/その他