ダイヤモンド工具で世界を席巻~ 株式会社リード

更新日: 2024年7月16日
 

株式会社リードは、精密加工向けのダイヤモンド工具の製造販売を主な事業とする会社です。今年で創業50年を迎え、仙台工場は昨年完成した新社屋で開発・製造を行っています。

今回は、取締役/品質保証部部長の石井氏、開発研究所の柿崎氏、業務部の福田氏に、同社の事業や製品、宮城県産業技術総合センター(以下「センター」)の活用などについてお話を伺いました。

主力製品のひとつである精密加工用ブレード。写真奥は成形用の金型。
生産が難しい「ポーラス体吸着プレート※1」の技術を応用したサンプル。表面に細かな気孔が見られる。

※1 ポーラス体吸着プレート:ポーラス(多孔質体)の気孔から空気を引いて、真空吸着するための部材。薄いものを変形・破損させることなく固定するためのもの。

HDD磁気ヘッド加工向け工具で世界トップのシェア

同社の主力製品は、ダイヤモンドを使用した工具である、精密加工用ブレードとダイヤモンドワイヤです。また、同社の粉末冶金の技術を活かしたポーラス吸着体プレートなども生産しています。

「弊社のダイヤモンド工具は、精密な加工が求められる分野で選ばれており、電子部品などを精度よく切る、磨くといった用途に使われます。仙台工場で製造している精密加工用ブレードは高剛性なのが特徴です。切断のときに曲がりにくいため、薄いブレードでも高精度の加工が可能で、歩留まりの向上にも貢献します。」(石井氏)

精密加工用ブレードは、電子部品を基板から切り出す加工(ダイシング)などに使われます。ハードディスクドライブ用の磁気ヘッド加工向けや、積層コンデンサ向けに使用されており、特に磁気ヘッド加工向けでは高いシェアを占めているそうです。

工場で拝見したブレードはとても薄く、中には30μm台のものもありました。

「ダイヤモンドワイヤは、半導体ウエハの素材であるシリコンインゴットからウエハを切り出す加工などに使われます。また、磁石の加工などにも使われております。」(石井氏)

製造販売はオーダーメードが中心で、大きさや厚さなどのお客様の様々な要望を伺い、最適な製品を設計して製造しているそうです。

とても薄く加工されたブレード。刃の厚みが薄いほど、加工物の材料ロス(切屑)も減る。
材料となる粉末を計量する様子。
心臓部である「焼結」の工程。
ブレードを薄く加工していく工程。
精密加工用のマイクロ・スライシングマシン。
ブレード加工用の治具が並ぶ。

センターを活用して多様化する顧客要求に応える

「センターの利用は、分析評価が多いです。お客様からの要望のレベルが上がってきているのに伴い、必要とされる分析評価のレベルも上がっているため、社内ではすぐには評価できない内容に対応するために利用しています。」(柿崎氏)

これまでにご利用いただいた装置は、引張圧縮試験機CTSEM/EDX熱分析XRDなど多岐にわたります。

「一番使っている装置は・・・、ほぼ全部使っているかもしれないです(笑)。アドバイスをいただきながら利用することで、社内で新しい分析として取り入れるかどうかを見極めるという面もあり、利用を通じて社内で実施できるようにする必要があると判断して新たに導入した分析装置もあります。」(柿崎氏)

そのほか、形状測定やシミュレーションなどのご相談もあり、開発から生産技術まで、様々な段階でセンターを活用しています。

ロボットを導入して自動化された検査ライン。

社員のクリエイティビティを引き出す環境の整備


「写真撮影は、やっぱり正面の絵の前がいいですよね。“私たち”って感じがするし。」(福田氏)

「(国内の各拠点)それぞれで自分たちのイメージを話し合い、テーマやモチーフを決めて描いてもらいました。それぞれの工場で違った絵が描かれています。」(柿崎氏)

まだ新しい仙台工場/営業所の正面玄関をくぐるとすぐに視界に飛び込んでくる、壁一面に描かれた鮮やかな絵画(ヘッダー画像の壁画)は、自分たちの価値観やビジョンを視覚的に表したものだそうです。CI計画※2というとロゴマークで表現することも多いのですが、同社では“絵画”というユニークな形態で、自社のコーポレート・アイデンティティを示しています。

※2 CI計画:コーポレート・アイデンティティ計画の略。企業理念やビジョン、独自性などを整理し、統一したひとつのイメージとして表現・発信する企業戦略。一般的に、ロゴマーク、キャッチコピー、テーマカラーなどで表現することが多い。

様々な場所にミーティングスペースが設置され、カジュアルに打合せできる環境が整備されている。

「色々な場所に気軽に打合せできるスペースを設けています。そして通路には絵画やイラストを飾っています。この絵は(プロのイラストレーターが描いたようですが)社員が描いた絵なんですよ(笑)。」(石井氏)

社内を歩くと、さっと集まってカジュアルにミーティングができるようなスペースが設置されていることがわかります。それらのミーティングスペースにはプロジェクターやモニターが常時置かれていて、アイデア交換や議論だけではなく、資料やデータを見ながら、より具体的な内容まで打合せができる環境が整っています。また、ミーティングスペースを囲む通路の壁には、きちんと額装された絵画やイラストがたくさん飾られ、社員の方々の創造性を刺激しているようです。

緑に囲まれたミーティングスペース。リラックスした雰囲気で議論できる。
カフェスペースも兼ねた食堂。アイランドキッチンが設置されている。

「講義室があるので、インタビューが終了したら、そこで技術交流会をしましょう。若手社員10人くらいが参加すると思います。」(柿崎氏)

取材当日、円形階段状の講義室で、センター職員を交えて技術交流会※3も行いました。センターからは、みやぎデジタルエンジニアリングセンター事業を担当する職員からAM※4技術について解説し、実際のサンプルを見ながら議論が盛り上がりました。

インタビューと工場見学・技術交流会の時間を合わせて2時間程の短い滞在でしたが、同社が、社員のクリエイティビティを引き出す環境を積極的に作っていることを体感できました。今回同席したセンター職員達も、心なしかいつもより積極的に議論に参加していたようです。

※3 技術交流会:企業の技術者とセンター職員が一堂に会し、事業紹介やセンター技術シーズ紹介などを行い、意見交換をする交流会。技術分野やご要望に応じて紹介する内容を設定し、センターを会場に実施する場合には施設見学も併せて実施しています。

※4 AM:Additive Manufacturingの略。特に産業用途向けの3Dプリンター技術を指すことが多い。

今後のビジョンについて

「ミッションとして“未来のものづくりをとことんサポートする”を掲げています。製品を納めるだけでなく、トータルで加工をサポートし、お客様と一緒にものづくりの品質を上げていきたいです。」(石井氏)

製品を納めるだけではなく、顧客と一緒によりハイレベルなものづくりを目指す同社では、加工データや加工ノウハウを共有する仕組みづくりや、IT技術やAIを活用した検査/解析システムの開発にも取り組んでいます。

「IT開発部の取り組みにより、ダイヤモンド砥粒解析や加工データの取得・解析ができるようになってきています。これらの技術を活かして、自社製品の高効率設計と品質向上に加えて、自社製品データとお客様の加工データを併せてお客様の製品の品質を上げる取り組みを今後進めていきます。」(石井氏)

自社技術に精通した方々が、今後のビジョンとともに自社の強みについて熱心に解説をしてくれた。

産業技術総合センターに期待すること

「高度なことが求められる中で材料開発や加工特性の評価などを行っているため、分析技術やAMなどの新しい技術を常にリサーチし続けていきたいのですが、日々の業務もあり、自分たちだけでは世の中のトレンドから置いて行かれてしまうと考えています。よってセンターには最新の技術情報の提供や技術支援で協力いただきたいです。また、昨年、技術交流会でセンターを訪問させていただきました。センターで何ができるかを社員に知ってもらい利用するきっかけを作る場として良い機会なので、今後も続けさせてほしいです。」(柿崎氏)

「評価だけでなく、新製品の開発なども一緒に進め、新しいアイデアなどの応用ができればと思います。」(石井氏)

お客様の要望に真摯に対応しながら、新しい技術にも取り組み、次の展開を見据えている同社。当日の技術交流会では、若手の社員が積極的に議論に参加する姿が印象的でした。センターでは、今後も、新しい技術情報の提供や技術協力をしていきたいと思います。

インタビュー後の工場見学の様子。異分野の職員にも分かりやすく解説をしてもらった。

注:秘密保持のため一部画像を加工しています。

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事業内容各種ダイヤモンド工具の製造・販売