ゴムビニル製品で暮らしを支える~ 弘進ゴム株式会社

更新日: 2024年10月9日
 

弘進ゴム株式会社は、ゴムビニルを主な原料とした「シューズ・ウェア」、「化工品」、「健康産業」に関する製品の製造販売を事業とする企業です。同社の製品は、特殊な産業用途に使われているだけではなく、私たちの日常生活の中でも広く活躍しています。

今回は、製品開発部 シューズウェア開発チームの千葉氏と横山氏に、同社の事業や製品の特徴、宮城県産業技術総合センター(以下「センター」)と行った調査研究の内容や設備の活用事例などについてお話を伺いました。

工場内には完成したばかりの業務用長靴がずらりと並ぶ。
水に濡れた床でも滑りにくい靴底。性能向上のために、靴底のパターンの研究を続けているという。

私たちの生活を支える製品を作り続ける

「私たちが働く亘理工場では、主に水産業界向けの長丈の長靴や、農業向けの長靴を製造しています。商品の見た目は似ていますが、靴底のパターンが滑りにくく、泥が入り込みにくい形状になっていたり、それぞれの業界のニーズに合わせて色々な工夫がされているんです。滑りにくさと泥のつまり防止を両立したこの形状は、特許も取ってるんです。」(千葉氏)

「幅広い業界に合わせた製品展開を行っていることが、私たちの会社の特徴のひとつです。実は食品関連では国内トップのシェアなんです。樹脂や金属製の先芯(重量物の落下から爪先を保護するための構造体)入りの長靴もあるんですよ。」(横山氏)

それぞれの業界のプロに長年愛されてきた長靴製品を作る同社では、東北大学と共同で防滑性能を高める研究を行うなど、日々、チャレンジを続けています。近年では、ゼネラルモーダーズの人気自動車ブランド「ハマー」や、「ウルトラマン」とコラボレーションした商品展開などにも取り組んでいます。

「弊社は“長靴”のイメージが強いかもしれませんが、インフラ関連…、たとえば道路や鉄道の周辺で使われる排水ダクトを作ったりもしています。」(千葉氏)

同社の製品は、産業分野だでけはなく、日常の様々な場面でも私たちの生活を支えてくれていることをお話し頂きました。

滑りにくさと、泥のつまり防止を両立した特殊な靴底パターン。

研究開発から工程内で必要な評価まで幅広くセンターを活用

「(現在の泉区にある)センターができた後くらいの時期から、主にゴム材料の分析で利用していました。初めはFT-IR(赤外分光分析)などの利用だったと思います。また、その頃は、射出成形機をお借りして、硬質材料のアイゾット試験やシャルピー試験などもさせてもらっていました。」(千葉氏)

材料分析からセンターの利用を始めた同社は、様々な場面でセンターの機器を活用しています。

「材料評価の用途としては、研究開発のほか、工程内で必要な評価などもあります。これまでにFT-IRや蛍光X線分析装置電子顕微鏡などを利用しており、幅広くお付き合いさせていただいています。」(千葉氏)

FT-IRなどの分析評価装置は現在もご利用いただいています。

長靴成形用金型の三次元デジタル測定によるDX化


「以前に一緒に取り組んだ調査研究で得たノウハウとデータが、今めちゃくちゃ役立っています!」(横山氏)

「長年使ってきた金型の経年劣化の具合をデジタルで可視化したことで、成形不良の要因をイメージしやすくなり、原因特定がしやすくなりました。現在開発中の製品で使う、新しい金型の設計にも役に立っています。」(千葉氏)

センターでは、令和4年度、横山氏と千葉氏と協力して、技術調査研究「アーム式デジタイザの測定ノウハウ確立及びデータ品質評価」に取り組み、長靴の成形で使われる大型の金型をデジタル上で三次元的に評価し、成形条件や金型の設計にフィードバックするノウハウを確立しました。本研究の重要点である、工場外に持ち出すことが難しい大型金型の三次元デジタル化には、センターのアーム式デジタイザ(ベクトロン)を活用し、長年の課題でもあった経年劣化によって引き起こされる不具合の原因特定をデジタル上で実現しました。

工場内での三次元測定の様子。測定には移動できるアーム式デジタイザを使用した。
デジタル化した金型のデータを評価している様子。

工場には、種類とサイズ毎に分かれた大量の金型が保管されている。

今後のビジョンについて

「製造工程で出る廃材のリサイクルに取り組んでいます。長靴はゴムビニル素材と裏布を貼り付けて成形しているので、それらを剥がさなきゃいけない。横山が中心になって技術確立に取り組んでくれました。今後は、使用済みの長靴をリサイクルする仕組みづくりに取り組んでいきたいです。」(千葉氏)

「千葉とまったく同じビジョンです(笑)。チームとして同じ目標を共有出来ているのかもしれませんね。加えて言うと、デジタル化はこれからも進めていきたいです。」(横山氏)

同社では、環境に配慮したものづくりを推進していて、今後は、サーマルリサイクル(廃材を焼却したときに発生する熱エネルギーを利用すること)だけではなく、マテリアルリサイクル(廃材を原料に再利用すること)にも取り組んでいきたいとのことです。

産業技術総合センターや宮城県に期待すること

「リサイクルは回収の仕組みも重要ですし、回収した廃材の分別技術もまだまだ考えなければならないことがあります。今も手探りでチャレンジしています。県には仕組みのサポートを、センターには技術のサポートをお願いしたいです。」(千葉氏)

「今後、AIを使って長靴のサイズを識別する仕組みを構築したいですね。他に、ナノテラス(仙台市青葉区にある放射光施設※1)の利用を始めているので、センターに協力やアドバイスをお願いしたいです。」(横山氏)

私たちの生活を支える製品を作り続ける同社では、「リサイクル」、「AI」、「放射光」といった新たな視点を取り入れながら、日々、研究や製品の改良に取り組んでいることが伺えました。センターでは、今後も、新しい技術にチャレンジする企業の方々を応援していきたいと思います。

※1 放射光施設:「放射光」と呼ばれるとても明るい光を使って、ナノレベルで物質の構造を調べることができる施設。

今回は弘進ゴム亘理工場に訪問した。

注:秘密保持のため一部画像を加工しています。

会社概要

所在地〒984-0816 仙台市若林区河原町2丁目1-11(本社)
〒989-2383 亘理郡亘理町逢隈田沢字北疣石 5-1(亘理工場)
連絡先問い合わせフォーム:https://www.kohshin-grp.co.jp/contact/index.html
ウェブサイトhttps://www.kohshin-grp.co.jp/
事業内容ゴム・ビニル製品の製造・販売