ヘキサコア株式会社は、分電盤とその監視システムの設計、製造、販売を主な事業としています。同社は1944年から宮城県内で事業を行っており、2013年に現在の場所に移転、2023年に旧社名である株式会社中央製作所から現在の社名に改称しました。
今回は、取締役総務部長の小松氏、デバイスエンジニアリング部の青木氏、企画開発室の阿部氏に、同社の事業や社名・ロゴ変更への取り組み、産業技術総合センター(以下「センター」)の利用などについて伺いました。
情報通信設備向けの分電盤と監視製品の設計・製造
「電気通信事業者やデータセンター向けの分電盤と、電力量などを計測する監視製品の設計、製造、販売が主な事業です。」(小松氏)
分電盤は、配線用遮断器や漏電遮断器などが取り付けられた配電用の電気設備です。その分電盤の中で各種センサーにより電力などを計測して遠隔で監視することができるのが監視製品。客先の要望によりオーダーメードでの設計、製造もしています。
「情報通信業界向けの製品に強みを持つのが特徴です。戦後の逓信省の時代から現在に至るまで、製品が変わりながらも通信の歴史にずっと携わらせていただいています。」(小松氏)
「分電盤を作るメーカーはたくさんがありますが、監視系はあまりやられていない。今後も力を入れていきます。」(小松氏)
分電盤の組み上げまでを行う同社の工場では、様々な配線に対応できるよう、電気接続用の導体部品の金属加工も行われていました。
感性分析手法を活用してコーポレートアイデンティティを一新
「創業75年のタイミングで社史をまとめ、創業80年に社名やロゴを変更しました。」(小松氏)
「ちょうどその時期に私がセンターの感性分析※1の手法を学ぶデザイン研修を受講し、会社に戻って内容を報告すると、みんなで“この分析手法、使えそう”となったんです。」(阿部氏)
デザイン研修を受講した阿部氏は、当初、研修で学んだ感性分析をリクルート業務に活用しようと考えていましたが、この手法を社内でプレゼンテーションすると皆が興味を持ち始め、やがて社名やロゴ変更に活用する動きが生まれていきました。その後、小松氏、阿部氏らは、センターの講師付き技術改善支援のスキームを活用し、デザイン研修の講師である宮内博実氏(株式会社デザインインテグレート代表)やセンター職員と共に打ち合わせを重ねていきます。
「ミーティングには社長を含め役員の人たちが参加します。まだ入社4年目で、はじめての経験にとても戸惑ったのを覚えています(笑)。いろいろな情報を集めたり、プロジェクト全体のフローを考えたりと大変でした。でも、その経験のお陰で、自分の中ではじめてのことに挑戦するハードルが下がりました。」(阿部氏)
小松氏、阿部氏らは、社員が抱く会社の現状のイメージや今後の方向性など、コーポレートアイデンティティ※2を決める上で重要な要素を、感性分析で使われるアンケート手法で調査していきます。調査範囲はなんと全社員に及んだとのことです。そういった苦労と努力を重ねながら、デザイナーとも協力して2つのロゴ・社名の案が完成します。
「最後は社員全員で投票をして決めました。アンケートや投票を通じて社名・ロゴ変更にみんなが関わってくれたんです。直接いろんな意見を伝えてくれた人もたくさんいました。」(阿部氏)
社名・ロゴ変更のプロジェクトが、最終的に、上層部や担当部署だけではなく社員全員を巻き込んだ一大プロジェクトに発展していったことを阿部氏は嬉しそうにお話してくれました。社員全員で作り上げたロゴは、新社名に含まれる英語の接頭語「Hexa(“6つの~”を意味する)」を表現したハニカム模様(正六角形模様)と、「core」の頭文字「c」を模した形状で構成されています。
「ハニカム形状は構造的にも強く安定していて、通気性も良いですよね?ロゴのハニカム模様にも”強固な信頼”、”メッシュのような風通しの良さ”、”会社の強いつながり”の3つの意味を込めています。ハニカム模様を取り囲む”C”は、(円の一部が開かれている様子から)会社が”開かれた組織”であることをイメージしています。」(小松氏)
「会社の理念が(プロジェクトメンバー外の)社員に浸透していったことも、今回の(コンセプトを明確にできる感性分析手法の)効果ですね。」(阿部氏)
※1 感性分析:ある商品やサービスなどから受ける印象(感性)を調査して可視化し,商品開発や市場調査に活用する手法。
※2 コーポレートアイデンティティ:企業理念、目標などを明確にした上で、それをキャッチコピーやロゴマークなどで可視化し、外部発信すること。
また、阿部氏は、プロジェクトを進める上で、会社のURLやメールアドレスのドメイン名にも使われ、愛着を持っていた”cew(旧社名の略表記)”を残すことにもこだわったそうです。
「新社名のすぐ下に表記されているキャッチフレーズ“Creative Evolution With”は、今まで使ってきたドメイン名(cew)を残すためというのがベースにありますが、この単語に新たな意味を持たせたくて、企業理念にある“時代の流れを捉えた技術開発”という視点から改めて考えなおしました。社の歴史を振り返ると、たしかに時代の流れに合わせて会社が発展してきたと分かる。コロナウイルスや世界情勢が大きく変わっていく中、今後もそういった時代に合わせた発展をしていくことが重要と捉え、cewに“Creative Evolution With ―創造的発展を「私たち」「お客様」「社会」と共に遂げていく―” という新たな意味を込めなおしました。」(阿部氏)
EMC試験を活用した製品開発
「センターを利用するようになったのは、監視製品を開発することになったタイミングです。センサーや監視機能はイーサネットを使用するため、客先の規格によるエミッションやイミュニティの試験が必要でした。そこで県内で調べたところ、センターで試験ができることがわかり、そこから利用を開始しました。」(青木氏)
センターでは、電波暗室や測定器を使用したEMCに関する試験を実施可能です。同社も利用企業の1社で、15年以上前から設備機器をご利用いただいています。
「特殊な規格もあり、坂下さん※3の力添えで試験できるように対応していただきました。」(青木氏)
「宮城県内で試験ができるのはありがたいです。今後は、重量のある分電盤を10m法電波暗室※4で試験したいと考えています。有効活用させていただき、今後も使わせていただきたいです。」(青木氏)
※3 センターでEMC試験を担当する電子応用技術開発班の職員。
※4 センターでは、利用者の皆様のご要望を受けて10m法電波暗室の整備に至り、2022年から供用を開始しています。
今後のビジョンについて
「環境、エネルギー、人材不足などに貢献できる製品を開発し、会社の理念にある“社会的課題の解決”というところで、会社の存在意義を広げていきたいです。また、私たちのビジョンに賛同してくださる企業と提携してスピード感のある開発をしていくことも考えています。」(小松氏)
「省エネルギーと電気代削減に“電力の見える化”という形で貢献できる監視装置を広げることで、社会に貢献していきたいです。また、AIを駆使した故障予知などにも挑戦したいです。」(青木氏)
「私は、社内の人材育成プロジェクトやサステナビリティ推進プロジェクトに参画しています。SDGsで触れられている多様性や従業員の働き方、パートナーシップなども、今後会社を持続させていくには重要になります。社内で働く従業員が自分らしく、やりがいをもって働けることを目指すとともに、従業員、社会、お客様といったすべての関係する方々にとっても良いものになるような取り組みを考えていきたいです。」(阿部氏)
産業技術総合センターに期待すること
「開発をして新しいことを生み出すことを止めないようにする、ということが弊社にとって一番重要。しかし、世の中の変化のスピードが速くなっている中で、私たちだけのスピードではついていけない部分がある。新しい技術へのアドバイスや技術力で協力をお願いしたい。」(小松氏)
「私たちだけではリソースに限界があるので、引き続き情報交換をさせてください。」(青木氏)
「様々なセミナーを気軽に受講できるのは心強い。引き続き開催してほしいです。」(阿部氏)
長年親しまれたてきた社名やロゴを変更するという一大プロジェクトに取り組む過程で、今後の会社の方向性を共有し、社員の結束を一段と強めた同社。お話を伺った3人それぞれが会社をより良くしていこうと考えながら取り組んでいることが感じられました。
注:秘密保持のため一部画像を加工しています。
会社概要
所在地 | 〒981-1251 宮城県名取市愛島台7丁目101-51 |
連絡先 | 問い合わせフォーム:https://www.cew.co.jp/contact/ TEL:050-3629-7435 (本社営業部) |
ウェブサイト | https://www.cew.co.jp/ |
事業内容 | 各通信事業者様向けの受配電盤 遠隔監視システム ラックキャビネット セキュリティ・モバイル関連 その他製品などの設計・製造 |