世界トップクラスのスポーツ選手を支える~株式会社ガリウム

更新日: 2024年8月1日
 

株式会社ガリウムは,仙台・泉ヶ岳近くに社屋を構える,スキー・スノーボード用ワックスのメーカーです。社名にもなっている「ガリウム」を配合した競技用ワックスをはじめ,スキー・スノーボード板のケア用品やチューンナップツールなど様々な製品を開発しています。

今回は,オリンピックなどの国際大会にサポートメンバーとして参加した経験を持つ東海林氏(同社社員)に,同氏が開発に携わった「FITブラシシリーズ」のお話を伺いました。

FITブラシシリーズの開発

「FITブラシシリーズ」はデジタル技術を用いて開発したスキー・スノーボード用のメンテナンスブラシです。手にフィットする3D形状が特徴的なこのブラシは,従来のものに比べて握りやすいので,握力が弱く,手が小さい子どもや女性でも扱いやすい製品です。また,左右どちらの手にもフィットし,ワクシング後のブラッシング作業が適切に行えます。

同製品は,宮城県産業技術総合センター(以下「センター」)が3Dスキャナー・3D-CAD・3Dプリンターを使って技術支援を行い,開発を進めました。

3D-CADを使って設計したFITブラシ。複雑な三次曲面を再現するために3Dスキャナーと併用して設計を進めた。

センター利用の経緯

「粘土を使い,スキー選手として活躍していた社長と試行錯誤しながら,握りやすい形状を模索しました。そうして出来た形状は複雑で,それを製品図面に正確に落とし込む技術を探していました。」

東海林氏から相談を受けたセンターでは,3Dスキャナー(非接触画像光学式三次元デジタイザ※1)を使って粘土で試作したモデルを三次元的に計測し,そのデータをもとに3D-CADで設計する工程と,3Dプリンター(エンジニアリングプラスチック造形システム※2)による試作品製作を支援しました。

※1,※2 各機器は開発当時のものから新型に更新しました。

FITブラシを持つ様子。指がかかりやすいように細かい部分まで考え抜かれている。

3D-CADを使った設計は東海林氏自ら行い,海外の製造工場とも三次元のデジタル設計データを使ってやり取りを進めたそうです。また,量産化の前には3Dプリンターで最終試作品を製作し,機能評価も行いました。

「いろいろなデジタル技術を使うことで製品開発がスピードアップしました。体感で(開発期間が)半分くらいになっています。笑」

デジタル技術を活かして開発期間を大幅に短縮し,高機能で魅力的な製品の開発に成功しました。

FITブラシ(手前)。奥は東海林氏が設計に携わったワックス用アイロン。どちらも手にフィットする形状に設計されていて使いやすい。

センターに期待すること

「ワックスの性能を評価するとき,実際にスキー板にワックスを塗ってテストを行います。でも,雪の無いオフシーズンになるとテストができなくなる。オフシーズンでも評価できる方法を一緒に探していきたいです。遠藤さん(センター職員/材料開発・分析技術部)ともよく話しているが,マテリアルズ・インフォマティクス※3の技術が活用できないかと考えています。」

※3 マテリアルズ・インフォマティクス:ビッグデータ,AI,コンピュータ・シミュレーションなどのデジタル技術を使って材料開発をスピードアップさせる手法。

会社概要

所在地本社・工場
〒981-3221 宮城県仙台市泉区根白石字下町6-5
電話022-348-2161
ウェブサイトhttps://www.galliumwax.co.jp/
代表者代表取締役社長 結城 谷行
資本金10,000千円
主な事業スキー,スノーボード用ワックス製造・販売業,スポーツ用品販売業,日用品雑貨販売