Protect you 株式会社はユニバーサルデザイン※1の視点で,様々な福祉用具や安全補助用具を開発・販売している宮城県東松島市の企業です。同社が開発した車いす用アタッチメント「らくP」は「2021年度東松島経営大賞」金賞を受賞し,介護保険福祉用具の認定を受けて,福祉施設や市役所などへの導入がはじまっています。
今回,代表の齋藤氏と,同製品のユーザーであり,開発にも協力したケアハウスはまなすの里の黒澤氏(施設長。介護福祉士/社会福祉主事)にお話を伺いました。
※1 ユニバーサルデザイン:年齢,性別,身体的能力に関わらず,出来るだけ多くの人が使いやすいように設計されたものや情報。
車いす用アタッチメント「らくP」の開発
車いす用アタッチメント「らくP」は,既存の車いすに取り付けることができるユニバーサルデザインのハンドルです。アルファベットの“P”のような形状のハンドルはさまざまな姿勢で握りやすく,車いす介助者の負担を和らげます。また,とっさに操作しやすい形状なので危険回避や避難行動時にも活躍します。
既存の車いすのハンドルのグリップと交換(追加工は不要)するだけの手軽さも特徴です。
同製品は,宮城県産業技術総合センター(以下「センター」)がアイデア発想,3D-CADによる設計,3Dプリンターを使った試作品制作,強度試験等を支援し開発を進めました。制作した試作品はケアハウスはまなすの里でユーザー評価を行い,最終製品が完成しました。
センター利用の経緯
「はじめて産業技術総合センターを知ったのは,宮城県よろず支援拠点の方からの紹介です。センターに相談した最初の内容は,ある特徴的な機能を持った体重計のアイデアに関してでした。」(齋藤氏)
らくP開発以前から齋藤氏はセンターの技術相談(無料)の制度を利用し,別の商品開発にも取り組んでいました。
「母の車いすを押しているとき“あなたは車いすを押すのが下手ね”と言われたことが“らくP”開発のきっかけです。それに自分は背が高いから車いすのハンドルが低くて,ずっと押していると腰が痛くなる。いろんな人が操作しやすい車椅子のハンドルを作りたいと思いました。」(齋藤氏)
齋藤氏から相談を受けたセンターでは,ブレインライティング※2の手法でアイデア発想を行い,その中から実現可能性の高いアイデアを選んで3D-CADで設計,それを光造形システムやエンジニアリングプラスチック造形システムなどの3Dプリンターで試作するところから開発支援をはじめました。
※2 ブレインライティング:あるテーマをもとに参加者全員が議論無しにアイデアをたくさん描き出していくアイデア発想法。アイデアの評価を後回しにするので,気軽にたくさんのアイデアを出しやすい。
ユーザーの声
「齋藤さんと一緒に何回も試作品の評価を行いました。(必要としているものが徐々に形になっていく様は)すごいなって思いました。力が入れやすいので車いすで避難するときもいいですね。砂利道でもしっかりとコントロール出来るし,段差や階段も越えられます。」(黒澤氏)
ケアハウスはまなすの里の黒澤氏は齋藤氏からの依頼を受け,らくP試作品のユーザー評価を行いました。
「あとから取り付けるものだから安全性にもこだわっています。JIS(日本産業規格)の車いすに関する試験項目を参考に,強度試験を何度も行いました。たとえば,取り付けたアタッチメントが突然抜けたりしないような試験もしています。」(齋藤氏)
齋藤氏は安全性にこだわり,強度試験を何度も実施しました。強度以外の面でも,ブレーキにすぐに手が届く形状に設計されていたり,様々な視点で安全性を検証したことがうかがえます。最終的に完成した製品は“介護保険福祉用具”の認定を受けています。
避難を想定し,らくPを使って坂道や階段を昇り降りする様子はProtect you株式会社のYouTube公式チャンネルからご覧頂けます。
センターに期待すること
「もっといろんな人にセンターがあることを知ってほしい。それこそ学生から老人まで。(センターに相談することが)アイデアを実現し,イノベーションを起こすきっかけになると思う。」(齋藤氏)
福祉の現場のニーズを細かくリサーチする齋藤氏は,実現したい次のアイデアが既に頭の中にあることもお話ししてくれました。
会社概要
所在地 | 〒981-0501 宮城県東松島市赤井字川前四番96番地1 |
電話 | 090-2880-4208 営業時間 9:00-18:00 [ 土・日・祝日除く ] |
ウェブサイト | https://protectyou.co.jp/ |
代表者 | 代表取締役社長 齋藤 洋隆 |
主な事業 | 福祉用具の開発・販売,福祉に関わる施設運営や組織活動のコンサルティング |