<研究事業名> バイオ・食品加工技術開発事業
<研究テーマ> 食品病原微生物の簡易迅速検出方法の開発
<担当者名> 遠藤美砂子,丸山昇
<目的>
PCR法をはじめとする核酸増幅法は,生物固有の遺伝子をターゲットにした検査法でその遺伝子同定の迅速性・正確性から,食品分野にも応用されている。しかし,核酸増幅産物の検出には毒性の高い試薬や高価な装置を必要とするため,食品工場などの現場には導入されていないのが現状である。そこで,安全かつ簡易に核酸増幅の有無を判断する方法として,核酸増幅副生成物であるピロリン酸の新規検出法を開発した。
<内容および結果>
1 概要
ピロリン酸(PPi)にヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼおよびキサンチンオキシダーゼ/デヒドロゲナーゼを作用させて,呈色生成物(ホルマザン)や化学発光に導くことで,ピロリン酸の定量を行う。本法は従来のピロリン酸測定法とは異なり,酵素の添加順序を変えるだけで,酵素共役反応の中間生成物(本法ではヒポキサンチン)の影響を受けずに測定することが可能であり,試薬の毒性が少ない。
2 結果
(1) 反応妨害物の影響
食品や培地中に存在するATPやリン酸は多量に存在してもピロリン酸測定精度に影響を与えなかった。またヒポキサンチンやキサンチンは100μMまで共存しても測定値に影響を与えなかった。
(2) PCR反応に伴うピロリン酸の放出
DNAテンプレート無し(0 ng)と有り(1 ng)の試料をPCR反応に供し,ピロリン酸呈色反応測定法による吸光度の変化を調べた。その結果,テンプレートが存在するとPCRサイクル数が増えるのにしたがって吸光度が上昇することがわかった(図1)。また増幅の有無を目視で判断することも可能であった。
(3) 化学発光によるピロリン酸の検出
より高感度にピロリン酸を測定できる方法として,ウミホタルルシフェリン誘導体(MCLA)を化学発光試薬とした測定系を開発した。本法を用いた場合,ピロリン酸濃度10-1500μMの範囲で定量性が得られた(図2)。