2025年2月7日(金)、デジタルエンジニアリングセミナー「製造業のためのビジネスアイデア創出ワークショップ（第3回）」を実施しました。
本ワークショップは、第1回、第2回に続く本格的な研修スタイルでのワークショップとして実施しました。
ワークショップとしては長めの10:00～17:00の時間で、多くの実習を通して、体験型でアイデア発想を習得できる場となりました。
ワークショップ序盤
講師にはアイデアプラント代表の石井力重氏をお招きし、石井氏が国内の大手企業、地域企業、大学等で講義をしているアイデア創出手法の実践と、生成AIを活用したアイデア創出の加速方法について解説がありました。
その後、産業技術総合センターの伊藤から生成AIの概要、画像・動画の作成実践例、商品企画やデザインへの活用方法、プログラミングへの活用例、課題と注意点などについて解説を行いました。
ワークショップ中盤
石井講師がこれまでの多くのアイデア発想の研究調査結果を基に開発した「JINCA – 人機共想カード -」を用いて参加者全員で、アイデア創出の実際を行いました。
これは、ChatGPTなどの生成AIにアイデア創出をしてもらうための専用プロンプトで、このフレーズに石井氏の長年の研究と、数多くのワークショップ経験からのノウハウが詰まっています。受講者は、アイデア出しに必要なフレーズを、このJINCAカードから素早く選び、このワークショップ用に開発されたJINCAプロンプトアシスタントのWebツールを使用して、簡単に、生成AIのプロンプト入力欄に入力していくことができました。
このJINCAは、生成AIを用いてアイデア創出をすることを前提に開発されたプロンプトセットです。ここでは、紙（アナログ）とパソコン（デジタル）の良いところをそれぞれ活用する形でアイデア発想を素早く行っていきます。それは人間「人」とAI「機械」が共に良いところを活用し、弱いところを補い合いながらアイデアを紡ぎ出していく、新しくも本格的なアイデア創出手法になります。
実際に、事業企画部門などで用いられている実績のあるフレーズなどが、現代的に絶妙にアレンジされており、一見難しそうな発想手法に手軽に触れることができました。
また、この「JINCAプロンプトアシスタント」は、固定的になりがちなプロンプトに対し、ユーザーが「アイデアを得たい対象」や「課題」を自由に入力することができ、それをプロンプト内に反映させることができ、また、仮にできあがったプロンプトを、同Webツール内で自由に編集できる機能も持っており、テンプレートとしての固定性と、プレースホルダーや自由編集などの自由性を併せ持つ、柔軟な機能を有しています。併せて、最終的にできあがったプロンプトフレーズをワンクリックでコピーできるため、生成AIへのプロンプト入力までの作業が最小化できることから、発想の思考状態をなるべく維持したまま、生成AIと繰り返しの発想作業を行うことができます。なお、このWebツールは、PCにもスマートフォンにも対応しており、どこでも手軽にアイデア出しを行うことができます。
（画像に加工を加えています。）
ワークショップ終盤
ワークショップの終盤には、これまた石井講師の研究開発の成果がぎゅっと詰まったアイデア発想とその評価手法「Creatio」を用いた講義と実習を行いました。
このCreatioは、番が交替するタイプのカードゲーム方式のアイデア出しの手法で、評価者1人が順番に回ってきます。評価者以外の参加者は、何をどのようにするか、示唆が書かれたカードから、短い時間でアイデアを出し、評価者はそのアイデア群の中から、自分の点数（投資額）を配分して行きます。最終的に点数（投資額）を最も多く獲得した参加者が勝ちとなる、発想とゲーム性を組み合わせたものです。
参加者には、ある意味瞬間的にアイデアを出す発想トレーニングにもなります。一方、カードに書かれたフレーズは、膨大な数の特許を体系化した技術発想手法をベースにしたものや、発想法の研究をベースにしたものが平易にアレンジされて書かれており、アイデア発想を強くアシストしてくれます。
参加者は、頭に汗をかきながらも、ビジネス現場で求められるアイデアのスピードと量を楽しく体験することができました。意外と評価する方も、難しさがあり、短時間でアイデアを絞り込んで行く判断力のトレーニングにもなりました。
参加者は、非常に多分野からの参加があり、土木技術、金属3Dプリンター、デザイナー、化学材料開発、食品産業 安全製品開発、など業種を超えた交流が行われました。
製造業の分野での新たなアイデアによる商品開発には、既存の技術や新しい技術を組み合わせて、消費者の気づいていないレベルの課題を発見してそれを解決していくかがきっかけになります。そのためのアイデアを限られた時間で多数創出し、また、適切に選択していくかもまたビジネス視点では必要です。
生成AIを適切に使い、アイデアの量を出しつつ、技術的発想法と組み合わせることで、新たな観点での的確なアイデアが出せることを体験できたワークショップとなりました。
宮城県産業技術総合センターでは、業務に役立つ様々な研修を開催しています。是非、WEBサイトやメールマガジン「ITIMオンライン」等で情報をチェックしてください。