<研究事業名> 産業化研究事業
<研究テーマ> 雑誌古紙を用いた発泡成形エコマテリアルの開発
<担当者名> 有住和彦,丸山昇
<目的>
古紙を用いた発泡成形エコマテリアル(商品名:パルフォーム)の厚物発泡成形体製造技術開発を目指し,厚物発泡成形において最も技術的に重要と考えられる乾燥工程負荷軽減のための減水処方開発を行う。
<内容および結果>
1 概要
現状のパルフォームは原料スラリー水分量が6,600g/紙1kgと多いため,水分を除去して製品を得るための乾燥負荷が大きい。また乾燥工程効率は製品表面積に大きく依存するため,現状の原料スラリー水分量では幅1,000mm×厚み10mm程度の薄物シート製造は可能ではあるが,さらに製品厚みを増したり,型成形品を製造を目指す場合には,製品表面積減少による乾燥時間の増加が課題となる。また,現状のパルフォーム製造工程においても乾燥工程が律速工程となっているため,乾燥負荷低減の実現により現状パルフォームの生産性向上が期待できる。
そこで本研究では,原料スラリー水分量を3,300g/紙1kg(現状比50%減)以下へ低減した原料処方によるパルフォームの開発を行った。また減水に伴って起こる混練不具合を改善するための製造条件把握も併せて行った。
2 結果
(1)原料スラリー水分量3,300g/紙1kg(現状比50%減)によるパルフォーム製造
原料スラリー水分量3,300g/紙1kg(現状比50%減)によるパルフォーム製造を考えた場合,スラリー粘度の増大による混練不均一が予想されたため,混練工程の見直しを行った。
今回の工程見直しで,原料スラリー水分低減による粘度増大を,バインダー液中への気泡導入により緩和することが可能となり,原料スラリー水分量3,300g/紙1kg(現状比50%減)での製品製造が実現した。
(2)原料スラリー減水処方における混練および製品特性を支配する要因の解析
原料スラリー減水処方における混練および製品特性を支配する要因を明らかにし,減水処方の条件最適化を図るため,特に原料配合を中心に要因解析実験を行った。実験に取り上げた因子は(1)粉砕紙種類,(2)バインダ種類,(3)バインダ量,(4)グリセリン量,(5)界面活性剤種類,(6)界面活性剤量の6因子とし,各3水準にてL27直交表割付による実験計画法に基づいて実験を行った。
その結果,原料スラリーの均一混練に関しては重要なポイントとして以下の知見が得られた。
- バインダー液粘度100mPa・s以上が必要(従来30〜40mPa・s)
- 紙/バインダー液比およそ1/3.6までは均一混練可能
- 界面活性剤量50g/紙1kgまでは,界面活性剤添加の効果はほとんどない
この知見に基づきさらに原料スラリーの水分量低減を図った結果,原料スラリー水分量2,450g/紙1kg(現状比63%減)までの水分量低減が可能となった。
また,製品特性に関しては,次の因果関係が明らかとなった。
この知見により,製品圧縮硬さがバインダ配合量およびグリセリン配合量により制御できる可能性が示された。
(3)今後の展開
今年度の原料スラリー減水処方開発成果に基づき,現行パルフォームの乾燥負荷低減による工程改善とコストダウンを図っていきたい。