<研究事業名> 特定中小企業集積活性化支援事業
<研究テーマ> XYZ機能の付加による県産品の差別化
<担当者名> 丸山昇,毛利哲,畑中咲子,櫻田ルミ
<目的>
本県のワカメ産業は,国内生産量で第2位にあるにもかかわらず外国産の影響を受け,これに対抗するため高付加価値化のための技術が望まれている。本研究では水産物の健康機能性,特に東北大農学部の大久保名誉教授の提唱するXYZ系活性酸素消去発光などによる抗酸化機能性に着目し,新たな加工方法の提案を行うこととした。
<内容および結果>
1.概要
生ワカメの魅力向上技術開発を行った。H14年度は,加工処理と抗酸化性の関係について調査し,加熱,乾燥のみでは抗酸化性は維持されるものの,塩蔵処理で減少することを見出した。
2.結果
(1)XYZ活性酸素消去発光系による抗酸化評価(図)
生ワカメの持つY値,Z値はもともと抗酸化食品として期待できる領域にあるが,湯通し加熱ではこれらの指標値に変化はなかった。しかし続けて塩蔵処理を行うことによってY値,Z値とも大きく減少した。また,生ワカメの乾燥処理では,Y値は維持されたがZ値は減少した。
(2)他の抗酸化指標との比較
植物の抗酸化機能を司る中心的物質であるポリフェノール含量(フォーリンチオカルト法により測定),および有機物ラジカルの消去能をモデル的に示す1,1-ジフェニル-2-ピクリルヒドラジル(DPPH)法により,XYZ系活性酸素消去発光系で得られた結果と比較した。
DPPHラジカル消去能は,加熱,乾燥では減少せず塩蔵により減少し,Y値と類似した動態を示した。一方,ポリフェノール含量は,加熱時のみ減少せず,加熱,塩蔵で減少した。このことから,ワカメの抗酸化に寄与する成分はポリフェノールのみではないことが示唆された。
Z値との関係では,乾燥,塩蔵のいずれの処理でも減少する点で,ポリフェノールの動態と一致した。しかし一般に,ポリフェノールにはZ機能が認められていないため,本結果も他の成分の寄与によるものと思われた。
生ワカメを,湯通し処理を行わないまま乾燥処理を行うと(素干し処理),塩蔵処理に比べて抗酸化機能性が維持された。今後,生ワカメの機能性やうまみを維持した加工条件の最適化に取組む予定である。