室温・超高感度磁気センサの開発

更新日: 2022年3月4日
 

<研究事業名> 地域結集型共同研究事業

<研究テーマ> 室温・超高感度磁気センサの開発

<担当者名> 中居 倫夫,天本 義己,阿部 宏之,古川 博道

<目的> 高周波キャリア型磁界センサの検出感度向上および駆動消費電力の低減

<内容および結果>
検討項目と結果

(1) 磁気センサ安定成膜の検討
 磁気センサ素子に用いられるCoNbZr薄膜の特性安定化と歩留り改善の検討として,スパッタターゲット交換後に必要なプレスパッタ時間の検討を行なった。また,スパッタ粒子廻り込みによる不要スパッタ防止に有効な,成膜室内に装着する遮蔽板の検討を行なった。

(2) 磁気センサ素子の環境安定性評価
 開発素子の環境劣化特性を検討するために,センサ特性の温度変化,85℃85%RH保持試験,高温保持試験,低温保持試験を行なった。結果として,85℃85%RH-200時間保持で素子特性に劣化がないことを確認し,十分な耐環境性を有することを明らかにした。この結果は,特別な保護膜付加を考える必要がないことを示す。また,150℃-100時間保持における特性劣化も小さいことが確認され,自動車等,耐高温環境特性を求められる用途への適用が可能であることも明らかにした。

(3) コプレーナ形状素子の形状影響の定量化
 素子構造を単純化し,作製工程数を減らす目的で採用したコプレーナ形状素子について,素子-グランド間に生じる電磁気的結合の影響を検討し,素子形状がセンサ出力に及ぼす影響について定量化した。本検討内容は,2002年日本応用磁気学会学術講演会で発表し,日本応用磁気学会誌Vol.27, No.4(2003)に掲載予定である。

(4) コプレーナ型磁石バイアス複合素子の試作
 高周波キャリア型磁界センサに薄膜磁石を複合化させて,バイアス磁界発生に必要な電力消費を低減させる素子を実現した。図1,図2に,素子の拡大写真と薄膜磁石バイアスの効果を示す。

 

図1:素子の拡大写真 図2:磁石バイアス複合素子の特性を示すグラフ
 

(5) 熱処理条件の検討
 センサ素子の特性調整に重要な,熱処理工程について,磁場強度・方向,処理温度等の設定条件の検討を行なった。

(6) 細線低バイアス化の原理考察
 平成13年度の知見である,センサ素子細線化によりバイアス点を低下させる手法について,物理的原理を考察した。本現象のポイントは,右図に模式図を示す傾斜磁区構造と磁壁傾斜角度にあることを明らかにした。本検討は,日本応用磁気学会誌Vol.27, No.7(2003)に掲載予定である。

図3:傾斜磁区を有した磁気センサの模式図

※ 本研究の一部は宮城県地域結集型共同研究事業の一環として行ったものである。