R6年度「第2回宮城AM研究会」開催報告

更新日: 2024年12月20日
 

2024年12月5日(木)、JAXA(宇宙航空研究開発機構)の施設である角田宇宙センターを会場に、R6年度「第2回宮城AM研究会」を開催しました。本研究会では、JAXA内部におけるAM技術の活用事例に関する講演や同施設の見学、研究会会員企業によるAM関連技術の展示などが行われました。

講演の一つ目は、宮城AM研究会スーパーバイザーの千葉晶彦特任教授(東北大学未来科学技術共同研究センター)より、航空宇宙分野における世界のAM活用事例を、網羅的に解説して頂きました。事例紹介では、海外での取り組み内容に加えて、宮城県内企業である日本積層造形株式会社株式会社コイワイが開発に携わった小型月着陸実証機「SLIM」や宇宙ステーション補給機「こうのとり」の部品についても紹介されました。

航空宇宙産業におけるAMの活用事例について解説する千葉氏。

講演の二つ目は、筑波より、国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構(JAXA)研究開発部門 第二研究ユニット(構造技術領域)の北本和也氏をお招きし、JAXA内で、AM技術を人工衛星や探査機などの部品開発・製造に活用している事例と、今後、日本のものづくり企業に期待する技術を丁寧に解説して頂きました。

大型の人工衛星には数十万~数百万点の部品が使わていて、その内、アルミ合金やチタン合金、ステンレスを材料とした金属部品の多くは切削加工で製造されており、リードタイムやコストの面で課題を抱えているとのことです。また、切削加工特有の設計要件(刃物が入る部分しか加工できない等)のため、複雑形状を作るためにはどうしても部品点数が多くなってしまい、その点も大きな課題となっているようです。

JAXAにおけるAM分野の取り組みについて、北本氏の専門分野である「構造」の観点から解説頂いた。

そこで、JAXA内部ではAM技術に着目し、切削加工では作れず且つAM技術の利点が発揮できるものを考えたり、完成までのリードタイムを削減する取り組みが積極的に行われているとのことでした。講演の最後には、「AMの材料特性向上」や「AM製造部品の品質保証」を確立したいといったJAXAのニーズもお話し頂き、研究会会員の皆さんはとても参考になったようです。

講演の“まとめ”について解説。

千葉氏と北本氏による熱のこもった講演が終了した後は、会場の後方やロビーに設置されたミニブースにて、各会員企業よりAM関連技術の紹介が行われました。ミニブースには研究会会員に加えて、角田宇宙センターで働くJAXAの研究員の方々も来場し、技術情報交換が盛んに行われました。

※ミニブースの出展企業一覧はこちら

JAXA職員にAM造形について解説する出展企業。
さまざまな造形方式のAM造形サンプルが展示された。

宇宙航空分野でも注目されているトポロジー最適化技術の紹介。
3次元スキャナーの実機展示。

会の最後には角田宇宙センターの見学会が実施され、それぞれの見学場所で担当職員の方々から詳しい解説をして頂きました。この見学会を楽しみに参加された方々も多かったようで、見学中、たくさんの質問が飛び交いました。

1つ目の見学場所の「宇宙開発展示室」では、角田宇宙センター元所長の吉田氏の案内で、ロケットのスケールモデルや実際に使われたロケットの部品などを見て回りました。
会員からは「日本のロケットはなぜ黄色なのか?」といったマニアックな質問も上がり、吉田氏からは、その理由もエンジニアの視点で解説して頂きました。

黄色は断熱材の色で、もともとは断熱材の上から白の塗料が滑らかに塗られていた(空気抵抗を減らすため)のですが、ペンキの重さを減らすこと等を目的に、白の塗装を止めたとのことでした。それによって二百数十キロの重量削減が出来たそうです。

その他にも、展示室外に設置されている燃料タンクなどの見学も行いました。駐車場近くにゴロンと展示されている巨大な燃料タンクは「金属ブロックからの“削り出し”です。」との解説に、会員からは「おっー!」という声が上がりました。

ロケットの構造や仕組みについての解説。一番奥が最新型のH3ロケット。
ターボポンプの解説を受ける研究会会員。
金属削り出しで作られた燃料タンク。

2つ目の見学場所は、世界最大の自由ピストン型衝撃風洞である「高温衝撃風洞“HIEST”」です。この施設は、宇宙からの大気圏突入や、大気圏内での超高速飛行時の環境を再現できる世界最大の施設です。他に類を見ないこの施設では、アメリカ航空宇宙局(NASA)や欧州宇宙機関(ESA)との共同実験も繰り返し行われているそうです。

研究員より解説を受ける会員。
全長約80mの巨大な実験設備。内部を衝撃波が最大秒速5kmのスピードで進む。
実験に使われたセンサーやカプセル。瞬間的に最大10,000℃の熱にさらされる。

次回の研究会は2025年の2月中旬頃を予定しています。宮城AM研究会の会員やMDE(みやぎデジタルエンジニアリングセンター)メンバーズの方々には、メールで次回研究会のご案内を差し上げます。会員登録がお済みで無い方は、是非下記より登録(無料)よろしくお願いします。

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