2019年2月26日(火)~27日(水)に,MDEデジタルエンジニア育成研修「アイデアモデリングコース」を実施し,6名の方に受講いただきました。
(1日目)アイデア創出手法の習得
講師であるアイデアプラントの石井力重さんから,アイデア創出に必要な考え方の概要や実例の多くをお話しいただきました。
一般的に,アイデア出しの会議で,平凡なアイデアしか出ないのは,その平凡なアイデアを出し切った先に,輝くアイデアが眠っているからであり,平凡でも,つまらなくても,まずは,人前で言って出し切ることが大切だとのことです。そして,アイデアを出しきった時に,つらいけれども,そこをひねり出すことで良質のアイデアが生まれると言います。
それを証明するかのように,石井さんが出したお題を元に,参加者全員で簡単なワークをしたところ,「初めのうちはみんな考えることは皆同じ」という結果が出て,一同納得の中,研修が進みました。
世の中にアイデア創出法はたくさんありますが,それを工業技術的な観点から分析した手法の1つに,「TRIZ(トゥリーズ)」があります。
石井さんは,TRIZを平易に誰でも使えるようにしたカードゲーム式教材「智慧(ちえ)カード」を開発されており,その智慧カードを使って,アイデア創出の実践練習を参加者の皆さんと行いました。ものの数分の間に数十個ものアイデアが出て,智慧カードの効果を感じることができました。
そして,形のある製品アイデアを具現化する方法のワークに入りました。今回は,粘土で,イメージを形にしてみるというプロセスを行いました。雑でも,まずは形にしてみることで,他人と議論するための道具になります。
そして,作った形を,3Dプリンターで造形するには,どのような形にすればよいか,また,造形する際の向きはどうするのが良いか,などをセンターの職員と話し合いながら,形の修正を行っていきました。
講師の石井さんからも,アイデアを更に高めるためのコメントをいただながら,最後には,粘土で作った形の写真撮影を行いました。
このときのポイントは,3次元CAD中で表示される軸に見立てた,立体物の軸を同時に撮影し,その写真を3次元CADに取り込むことにあります。この軸自体も,産業技術総合センターが,事前に3次元CADと3Dプリンターを用いて作っていた道具です。
(2日目)3次元CADを用いたモデリング手法の習得
3次元CADであるFusion360を用い,1日目に発案したアイデアを3次元のデータにしていきます。
実際に写真を3次元CADに取り込み,3次元CADの画面内のXY,YZ,ZXの3面に貼り込み,下絵にします。3次元CADは,様々な角度から自在に視点を変えることができるため,3次元CADに慣れていない人にとっては,画面上で自分がどこを向いているかわからなくなってしまうことがありましたが,それぞれの写真に,実物の軸が写り込んでいるので,3次元CADで形を書いて行く際に,方向を見失うことがありません。
皆さん方向を見失わずに,素早く形状を作り込んでいくことができました。
3次元CADの講師は,産業技術総合センターの真崎が務め,参加者の後ろに座り,参加者の皆さんの画面の進捗を見ながら,適切なスピード感で進めて行きました。
また,講師の操作画面は参加者の皆さんのモニター画面の横でサブモニターとして表示されるので,高解像度の講師の3次元CAD画面をすぐ手元で見ることができます。
アイデア着想を徐々に3次元CADで形にして行くにつれ,身振り手振りでアイデアを説明できるようになってきました。また,実物を粘土で作っていることから,既にある物と連動して機能を発揮する商品アイデアも,リアルに説明する事ができるようになりました。
また,こうしたツールの効果もあってか,参加者同士のディスカッションや相互交流も進み,ネットワークが広がる場にもなりました。
今回のアイデアモデリング研修は,講師の石井さんと産業技術総合センター職員がディスカッションして作り上げたオリジナルのプロセスになります。粘土を介在して,アイデア発案者と周りの人,また,リアル世界と3次元CAD世界の間をとり持つことから,「ネンド・ダイアローグ」と名付け,今後のデジタルエンジニアリング研修などで活用していく予定です。